猫は君を永遠に愛します

永遠のテーマ【猫とは…猫の幸せとは?】

第9話 部屋に入ってきたルイちゃん

引っ越してきて1週間あまり「んな~んな~」と徘徊するかのように鳴いて姿を見せなかったルイちゃんですが…。

1ヶ月が経った頃、飼い主さんのベランダの室外機の上に座っているのを見かけるようになりました。
この辺りを全て網羅しつくしたのかなと空は考えました。

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飼い主さんの部屋のベランダの室外機のルイ

空がマナちゃんといつものようにアパートの後ろへ散歩に行った休日の朝の事です。
もし突然車や人が来てビビりのマナちゃんが部屋の中に逃げ込めるように散歩の時は少しベランダの窓を開けていました。
戻ってみると…
ルイちゃんが部屋の中に入っていたのです!
水をガブガブ飲んでいます。
そして飲み終えるとベランダから外へ出て行ったのです。
「お水をご所望だったのね」空は呟きました。
マナちゃんは嫌な感じだと思ったようですが、喧嘩にはなりませんでした。
なぜならルイちゃんがものすごく低姿勢だったからです。マナちゃんの様子を伺っているのが空にもわかりました。

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お水をご所望だったルイちゃん

月曜日~金曜日は会社に行かなければいけない空でしたが、ルイちゃんの飼い主さんの出勤が6時なので、空の出勤する7時50分までは時間にずれがあります。
水を飲みにルイちゃんが来てもある程度の余裕はあります。その週は3日間ルイちゃんが顔を出しに来ました。
どうやら飼い主さんが出掛けると直ぐに来ていたようでした。

次の土曜日の事です。
ルイちゃんは朝ベランダから部屋に入ってくると、マナちゃんとの距離を置くようにして座りました。
飼い主さんの様子はわかりませんが、車は駐車場にあるので家にいるはずです。

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部屋の中を伺うように入ってきたルイちゃん

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マナちゃんの様子を見ながら部屋の中に座ったルイ

スーパーに行くために空が玄関から出ると、丁度ルイちゃんの飼い主さんに出会いました。
「ルイちゃんが家に来ていますが」と空が言うと「そうっすか、実は俺は週に何度か夜の送迎のバイトしているんで。昨夜も送迎で」空はその答えに送迎が代行運転だと思いました。代行運転ではなく、ホステスさんの送迎だと知ったのは暫く後の事です。

その後、何度か立ち話をする間にルイちゃんの飼い主さんの事が少しずつわかって来ました。
「僕マラソンのためにこのアパートに引っ越してきたんすよ」
ここで初めてなぜいつも走って行くのかがわかりました。
「マラソンでは有名なんす、ここの管理会社の人も俺の事を知っていたし」

な・な・何なんですか~?

ルイちゃんが来てるって言っているのに自分の事を話すルイちゃんの飼い主さんに「そうですか、マラソン頑張って下さいね」と礼儀上そう言わざるを得ませんでした。
「へい、じゃあ俺走ってきますんで」
それだけ言うと走って行ってしまいました。

それからルイちゃんは空とマナちゃんの部屋に毎日来るようになりました。
マナちゃんと1年半暮らしてきたアパートに猫を飼う人が引っ越してきた事だけでも、空とマナちゃんにとっては大きな変化だというのに部屋に入ってきたルイちゃんに戸惑いを隠せない空なのでした。

戸惑いは始まったばかりですよ、空さん。
あらあら、影の声である私がこんな事を言ってはいけませんね。
続きは次のお話しで…。

第8話 引っ越してきた猫に会う

隣の隣に引っ越してきたルイちゃんという猫は鳴き声だけは聴こえますが、なかなか姿を見ることが出来ませんでした。
ある夜、空と外に出たマナちゃんは猫(ルイちゃん)の匂いを感じたのかルイちゃんの部屋の玄関の前で立ち上がって匂いを確認していました。
『マナは猫が引っ越してきたことがわかるのね、犬は鼻がいいと聞くけれど猫も鼻がいいのかしら』と空は思いました。

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隣の隣の玄関の匂いを嗅ぐマナちゃん

そんなある日の夕方、ベランダの洗濯物を取り込んでいた時のことです。
ひょこんとベランダの柵の向こうに、こちらを見ている猫がいました。
「あら!もしかするとルイちゃんかしら」
空はスマートホンをとっさに出して写真を撮りました。
一目見ただけですが、片耳がアメリカンカールのようにクリンと外側にめくれていました。
「可愛い・・・」と空は思いました。

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ベランダから覗いていたルイちゃん

その数日後、仕事から帰ってきた空はバッタリとルイちゃんの飼い主さんに会いました。
「こんばんは」と挨拶をする空にルイちゃんの飼い主さんが「僕は小学校の時にカビの生えたパンを食べていたんだ」と自分の育った境遇を話したのです。

『な・な・なんなんですか~?』

何だか難しそうな人と感じていた空は驚いてしまいました。

動揺しながらもルイちゃんの事が気になっていた空は「ルイちゃんは家の中ですか?」と聞きました。
「おいルイ!」と言うとルイちゃんがヒョコンと玄関から出てきました。
『やはりベランダから覗いていたのはルイちゃんだったのね』そう思った瞬間の事です。
「ルイと遊んでいて下さい」と言うと彼はどこに行くのか走り去ってしまいました。

『そ・そ・そんな~!』

初めて会った猫が空と遊べるはずはありません。
そんな空の思いのとおりに、ルイちゃんという猫はトットットと走り去っていきました。
大丈夫かしら…
一応遊んでいて下さいと言われた空はこのまま放っておいていいのかしら?とアパートの回りを見てみましたが、ルイちゃんの姿はありませんでした。
部屋では空の帰宅を待っているマナちゃんが待っています。

「マナ、ただいま」と言いながら玄関の扉を開けました。
季節は夏!
空が帰宅する6時はまだ明るいです。
着替えて1日お留守番していたマナと短い散歩に行きました。
マナちゃんはとてもうれしそうです。
散歩はいつもアパートの後ろの駐車場です。
空き地のフェンスに沿って歩くマナちゃんはフェンスから飛び出たネコジャラシの草で遊んだり。
ソロリソロリと歩くマナちゃんの白い4足の足袋が何ともきれいだなと思う空なのでした。

アパートの後ろの駐車場は何台か車が駐車している程度ですが、その方々はマナちゃんが空と散歩をしていることがわかってくれるようになり、すごくゆっくり入ってくれるようになっていました。
とはいえ、ビビりのマナちゃんが車に驚いてベランダへ走って戻ると危ないので、空は細心の注意を払い5分~10分程度の短い散歩でした。

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駐車場と空地の間のフェンス際を散歩するマナちゃん

休日の事です。マナちゃんはプランターの花に水をあげる空とベランダにいました。
そこへルイちゃんが現れたのです!
仲良くなれるといいなという空の思いとは逆に、マナちゃんは威嚇するような素振りを見せました。
ルイちゃんはそんなマナちゃんに何もしないよというように座りました。でもマナちゃんは他の猫に会うこともなく育ちましたので、仲良くしようというよりもやはり警戒し好戦的です。
そんなマナちゃんをルイちゃんが追いかけました。
マナちゃんはベランダから部屋の中に逃げ込みました。

空はその様子を見てルイちゃんが何とかマナちゃんに自分は何もしないよとアピールしているのを見逃しませんでした。
ルイちゃんはまるで「近くに住んでいるんだから少し仲良くしたい」と思っているようでした。
マナちゃんはルイちゃんのように外に慣れていない世間知らずなんだと空は実感したのでした。

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なに? ベランダのマナちゃんがルイちゃんに気がついた

さてさて影の声である私はここまで黙って見ていましたが…
少々お話しさせて下さいね。

貴女は隣の隣の隣人さんの身の上話しを聞いて多分『かわいそうな人なんだな』と心の中で思ったことでしょう。
そしてルイちゃんにはマナちゃんと仲良くしようとしていることを直感的に感じたのですね。
影の声である私は貴女が育ってきた過程と形成されたアイデンティティをよく知っています。
『短所は長所、長所は短所でもあるんですよ空』

この時から厄介な方向へ物事が向かっていくのですが、続きは次のお話しへと進みます。

第7話 どんな猫なんだろう?

アパートの同じ階には、空とマナちゃんが住んでいる部屋だけになってから半年以上。
まるで時が止まったかのような日々でした。

そこへ引っ越してきた人と猫。
ドキドキで打ち明けた
【あの~家の猫はエイズ感染なんです】
【大丈夫っす】
少しホッとすると同時に戸惑いを隠せない空です。

でも雌だって言ってたわよね、マナと同じ雌で良かったわ
これがどんでん返しになる日がくるとは思ってもいない空でした。

どうやら帰宅時間も隣の隣の人とは似通っているようです。
「こんにちは、猫ちゃんのお名前を教えていただけますか?何歳ですか?」
と声をかけました。
「ルイです、多分2才くらい」とだけ言うと、さっさと何処かへ行ってしまいました。

どんな猫さんなんだろう?
見たい・見たい・見たい~!
猫同居型アパートになってから初めて猫を飼っているお宅が引っ越していらっしゃったのですから。
空の願いはしばらく叶うことはありませんでした。

夜になると赤ちゃんが鳴いているような声が聞こえました。
「んな~んな~」
何なんでしょう?今までこんな声を聞いたことがありませんでした。
しかも外から聞こえて来ますが徘徊をしているかのようです。
それは1週間近く続きました。

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外に興味を持ち出した頃のマナちゃん

その間に猫さんの飼い主さんに会った時の事です。
「あの鳴き声はルイちゃんでは?大丈夫ですか?」と空は心配になり聞きました。
「大丈夫っす、あいつ頭いいんで」

な・な・なんですか~!
なんというユニークな飼い方なのかしら…
引っ越ししてきてからルイちゃんという猫は縄張りを訴えるように「んな~んな~」
姿は見たことがないけれど、飼い主さんはベランダの窓を昼夜問わずいつも猫さんが通れるほど開けっ放しでした。


空、貴女はマナちゃんを育てるにあたってベランダの窓を網戸を開けずに「マナ危ないよ車来るよ」と1ヶ月言い続けていましたね。
そして1日アパートでお留守番しているマナちゃんがかわいそうだと朝と夕方にマナちゃんと短い散歩をしていましたね。
貴女の考えは【猫にとっての幸せとは?】
ケージの中で過ごす、去勢や避妊…。
初めて子猫を拾って育てた貴女は迷うことばかりだったことでしょう。

─ だから隣の隣の猫の育て方にも驚きながらも【なんというユニークな飼い方なんだろう】としか思わなかったのかもしれません。

さてさて貴方がこれから直面する出来事が始まろうとしていますよ!影の声である私は少し黙ってマナちゃんと貴女を見ていましょうね。

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空と朝夕の短い散歩をするマナちゃん

第6話 突然引っ越してきた隣の隣の隣人さん

皮膚科に点滴に通う空。
様子見で1週間、女医先生は薬物アレルギーだとの診断でした。
しかし発疹だけではなく身体も弱っているとの事で、会社に出勤しても1週間に1度診察に行く日が続きました。

発疹は口の中や喉にも出てきました。特別な薬が処方されました。
だけど、だけどね!
この薬のために不思議な再会をするのです。
処方箋薬局に行くと取り寄せないと無い薬なのでとの事でした。
事務の方が、薬が届いたらお家まで届けますとの親切に言って下さいました。
なんて親切な方なのだろうと恐縮しがらお願いしますと答えた空でした。

2回目に薬を届けに来て下さった時の事です。
「実は私そこに住んでいるんです」
な・な・なんと~!
その方は隣の隣の3階建ての若くて優しいご夫婦の奥様だったのです。
このアパートに引っ越してすぐの事です。お庭のバラの花を見ていた時に「バラの花を1輪いただけませんか?」と言う空に惜し気もなく笑顔で1輪のバラを切って下さったのでした。

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優しい若いご夫婦からいただいた1輪のバラの花

「何で言ってくれなかったのですか!」と私はその奥様の肩を撫でて言いました。
「私ももしかするとと思っていたのですが、少しふっくらされて違う方かなと」

確かに空はマナちゃんと暮らし始めてから少し体重が増えました。1人で食べる生きて行くだけの食卓はマナちゃんと囲む楽しい食卓になったのですから。

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いつだって何だって一緒にしたいから…焼きたてのパンもマナちゃんが食べなくてもの空

世の中は本当に不思議なものです。
薔薇の花をいただいた5年前の思い出や空き地のおじさんのお話しも楽しく出来ました。

1ヶ月が過ぎた頃、空の体調はあまり良くなりませんでしたがようやく完治と言っても良いくらいになりました。

                     ●

そんなある日、仕事を終えてアパートに着くと何やら隣の隣の部屋の玄関の扉が開いています。
「こんにちは」と挨拶をする空。
「引っ越してくる方がいるので掃除に来ました。猫を飼っている人らしいです」と答える女性。
その方はアパートの管理会社の事務員さんでした。

すごい!安い家賃だから管理会社の事務員さん自らお部屋の掃除までして下っていることに驚きと同時に頭の下がる思いがする空でした。

「あの~隣の部屋の方は住んでいらっしゃらないようですが、引っ越されたのですか?」と空が聞きました。
「え~?引っ越しはされていませんよ。家賃も払っていただいています」とその事務員の方は掃除をしながら驚いたように答えました。

驚いたのは空です。
だって去年の秋に大々的な水漏れが隣の部屋にあってから住人である先生は住んでいなかったからです。
住んでいなくてもまだ借りていらっしゃる事が後々良かったと思うことになるとは、思いもしなかった空なのですが…。

どんな人が引っ越して来るのか?猫を飼ってる?
空はあまり気にはなりませんでした。
ところがところが…。
それは空にとり、またマナちゃんをも巻き込む試練の延長になることになるのです。

その翌日の事です。
いつものように仕事を終えて帰宅すると、バッタリと隣の隣の部屋の人が玄関から出てきました。
何だか話しかけるのも難しそうな若い男性でした。空は何となくそう直感したのです。
「あの猫を飼っていらっしゃると聞きましたが…」
「ええ猫いますよ」
とだけ言うと、どこかへ走って行きました。

空は自分の部屋に入るとマナちゃんを見て思いました『マナはエイズ感染猫、猫を飼っているなら言っておかなければいけないわ』

玄関を掃除して外に出ると、丁度引っ越してきた人が帰ってきました。
「あの飼っていらっしゃる猫は雄猫ですか?」と聞く空に「雌猫です」とその人は答えました。

【あの、家の猫はエイズ感染しているのですが】と空は必死の思いで言いました。
「大丈夫っす」とだけ言うと扉を開けて部屋の中に消えてしまいました。

な・な・何ですか~!
【大丈夫っす】の言葉に開いた口が閉まらないような空でした。

この人なんなんですか~!がこの後も続くことになるのですが、続く次のお話しで…。

第5話 さぁ、お仕事~!なのに

土曜日の夜に退院した空、ちょうど良い具合に月曜日は祝日でした。
マナちゃんと2日間過ごすことができました。
楽しそうに「マナ~!」という空の声がいつものように聞こえます。

だけどね--
長期休暇だけはしたくなかった空。届け出書類も書く必要があり、火曜日に出れば書かなくてすみます。
『何だか体が辛いな、1週間も入院で寝ていたためだわ。上げ膳据え膳だったのですもの』

空は8時だというのに道路が蒸せかえるほど暑い中を会社に向かいました。
バスを降りると最近知り合った地域猫さんに出会いました。
今朝は車の下に潜り込んでいました。

【私なんて会社に行けば冷房がかかっている】

この子は1日暑い中を生きなければいけない。
空は「暑いね、元気でいてね」と何度か車の下の地域猫さんに話しかけると、何度も何度でも振り返りながら会社へと歩きました。

【空は外で暮らす猫の過酷さを初めて知りました】

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朝からコンクリートがむせかえるように暑い夏 車の下にいた外猫さん(地域猫

入院後の上司への挨拶を終えると、机の上に積み上げられた書類を片付けました。
「マナが待っている!帰ろう」
終業時間が終わるとバス停へと走りました。

空の帰りを待っているマナ。
マナちゃんはやはりさみしかったようです。
空の足音を聞くとドアの中から「にゃ~ん」と高く細い声で鳴いています。
マナちゃんは空と暮らすようになってから、ずっと(月)~(金)朝8時~夕方6時半までお留守番です。
空はそんなマナに『お留守番ばかりでごめんね』という気持ちでいっぱいでした。
だからママと呼べない!パパ兼ママ…

その日の夜です。
空が腕を見ています。赤い発疹がありました。
『何だろう?何かにかぶれたのかな』
そんなに気になりませんでした。
翌日も仕事を終えてマナちゃんの待つアパートへと帰った空です。

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マナちゃん!しばらくはチュチュおあずけだね

「何これー!」
見ると腕だけではなく脚もお腹も全身に発疹が出ていました。
幸い次の日は入院していた病院の診察で有給休暇をとってありました。
医師に発疹を診てもらうと「リンゴ病かもしれないな」との事でした。

廊下ですれ違った薬剤師さんが声をかけてきました。発疹の事を話すと「自分も原因不明で発疹が出た事があったけれど、心配なら皮膚科に行ったほうがいいわよ」と言ってくれました。

空の頭には『リンゴ病なら人に感染する病気よね、この発疹が何かわからなければバスの中で会う人達や会社の人達にうつしてしまう!それはできないわ』しかありません。

幸いにも皮膚科の病院は近くにあり、その足で皮膚科まで自転車を走らせました。
空の発疹を診た女医先生は「原因はわかりませんので、とりあえず採血して点滴ですね、明日も点滴に来て下さい」と言うと至急採血の結果を回すようにという看護師さんへの言葉が聞こえてきました。

【また点滴~!マナが待っているのに。大体2日間だけしか会社に行っていないのに】

一難去ってまた一難…
空は上司に伝染性のある発疹かわからないのでお休みお願いしますと伝えました。

翌日ドキドキしながら結果を聞きに行く空。
女医先生は「原因はわかりませんが、感染性の発疹ではありませんでした。入院していた病院の処方で疑わしい薬がありますので、止めて良いか主治医の先生に聞いてみますね。そして全身症状が悪いので様子を見て治らなければ大きな病院に紹介状を書きます。明日も点滴に来て下さいね」

【良かった~!伝染性のものではないんだ】

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またまた皮膚科で点滴の空

マナちゃんを拾ってからも有給休暇をとったこともなかったのではありませんか?
影の声である私もマナちゃんと空が何か目に見えない力によって逆風が吹いている事だけはわかります。
さてさて…この先どうなるの~!
空の言葉を借りればそんな感じですよね。
まだ続く変化の事は今は黙っておいて次に進むといたしましょう。

第4話 彼女に決めた!

あらあら、空は入院したようですね。
これまでマナちゃんを置いて外泊することはなかったのに…。
ビビりのマナちゃんをどうするのでしょうか?
影の声である私も本当に心配です。
空の決断と様子を見守ることにしましょう。

                     ●

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すぐそこにマナがいるのに!病室の窓から見える景色
空は消灯になったベッドから窓の外を見て考えていました。
『明日からどうしよう、カリカリとお水とトイレ。マナの世話を誰に任せたら1番ベストなのかな』


あの人?この人?かな…
頭に浮かぶ人たちがアパートの扉を開ける姿を思い浮かべました。
『そうだわ!やっぱり彼女しかいない』
直感で決めた人は以前アパートに遊びに来た時に、ビビりのマナちゃんを抱っこした時に失禁しても構わずにマナちゃんを抱っこし続けていたのです。

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失禁をしたビビりのマナちゃんを抱っこし続けていてくれた彼女

口調はハキハキ! 歯に物をきせずに言う彼女は、この地方の方言で言えばハバシイ(すばしっこく賢い)とかキッカン(勝ち気) な子です。
空は彼女が誰よりも心根の優しい子であることを知っていました。

翌朝、空は彼女に電話をかけました。
「入院したんだけど、マナのカリカリとトイレお願いできる?」
仕事が終わったらアパートの鍵をもらいに病院行くねという返事が返ってきました。

その日から『彼女しかいない!』の空の決断が正しかったことを証明してくれました。
オロオロとマナちゃんを心配して空が尋ねる質問にも端的に分かりやすく答えてくれました。
2日目には撮った写真を送ってくれました。
そして…
な・な・なんと~!
ビビりのマナちゃんが彼女の差し出すチュールに釣られて洗濯機の後ろから出て来ようとする写真と共に「カリカリ全部食べてあるし、ひとりでオモチャで遊んでいるよ」という言葉が添えてありました。

ホッと胸を撫で下ろす空でしたが「なぜマナがオモチャで遊んでいるとわかるの?」と夜電話して彼女に聞きました。
「だってオモチャの位置が違うもん」
なんという観察力!さすがハバシイ奴(すばしっこく賢い) と感心しきりと同時に…

『やっぱり彼女に決めた!』
が正しかった事を確信する空でした。

そんな入院生活でしたが3~4日と言われていたのに、4日を過ぎても退院や外出の許可がおりません。

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空が夕焼けに染まる頃【マナに会いたい】

空は流れる涙を堪えきれずにいました。
今日は医師の回診の時に外出の許可をもらおうと待っていましたが、その日に医師の回診がなかったのです。
朝9時~午後5時までの点滴は続いています。
その後も看護師さんの体温計測と血圧測定と血液内の酸素計測もあります。
時間外入り口の扉は午後10時に閉まり、朝6時に開きます。

【マナに会いたい】

空は朝6時に時間外入り口が開くと入院する時に乗ってきた自転車に乗ってアパートへ向かいました。
たった5日間人が住んでいなかっただけの部屋は、誇りで荒んでいました。

「マナごめんね」
空はマナを抱きあげると頬ずりをしました。
窓際には世話をしてくれた彼女が置いてくれた椅子ひとつ。マナが外を見ることが出来るように置いてくれたものでした。
その椅子の座布団で空と遊ぶマナちゃん。

少し遊ぶと座布団を埃っぽい床に置いて、寝転びました。
マナちゃんが1番安心するのは…
空の腕の中でフミフミチュチュをすることだと空は知っていました。
マナちゃんは拾った翌日から空の腕の中で大きくなりました。
誰にも心を許さないマナちゃんは空をお母さんだと勘違いしたからです。

そんなに時間はありません。
7時には看護師さんが病室に来ます。
空はマナちゃんに「ごめんねマナ、待っててねマナ」と言うと病院まで自転車に乗って戻りました。
病院の泊まりの看護師さんの朝は早いです。
空は黙って外出してアパートに帰ったことに罪悪感でいっぱいでした。
点滴をするために病室に来た看護師さんに打ち明けました。
看護師さんは医師に言わなくても自分には言っていかないと駄目です、何かあったらどうするのですか?と諭されました。
「本当にすみません。どうしても猫に会いたくて」と言った空が1番自分がした悪いことをわかっていました。
医師も看護師さんも空の病気を治すために尽力してくれていると思うと涙が頬をつたいました。
そしてしばらくしか会えなかったのに直ぐにまた別れた自分をマナがどんな気持ちなのだろうと思うと後悔しかありませんでした。

「弱い飼い主でごめんね、マナ」

その2日後に退院許可が出ました。
【マナに会える】
その事だけが空を支えていました。
退院の朝、次の診察日の時で支払いは良いですからと言われましたが、仕事の事を考えると今銀行に行って支払った方が良いと思った空。
銀行に行って病院に戻ってくると1階の待合室のソファーに倒れ込みました。
『退院だというのに何故こんなに体が辛いのだろう』
病室まで看護師さんが車椅子で運んでくれました。

医師の退院許可は取り消されることもなく、点滴が終わり晩ご飯を食べるとマナちゃんの待つアパートへと自転車を走らせる空でした。

この後もマナちゃんの待つアパートへ帰った空に思いがけない病が待っていたのです。
この続きは次でお話ししたいと思います。
だってマナちゃんと空が、幸せそうに同じ布団の中で眠っているのですから…。

第3話 思いもかけない試練続出の始まり

近隣の変化に「なに?何故こんなことに?」と戸惑う空です。

回りの親しい人達が変化する中、後ろの更地になったおじさんの住んでいた料亭の男子寮の建築工事が突如始まりました。
マナちゃんと楽しく過ごしたゴールデンウィークが終わって間もなくの事でした。

土日も夜遅くまでガンガンゴンゴン。
空が待ちに待ったマナちゃんといられる休日です。
ビビりのマナちゃんは建築工事の音で洗濯機の後ろに隠れてしまい出てきません。
「待ちに待った休日なのにマナといられない」
空はすっかり神経がやられてしまいました。

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マナちゃんの見ている塀の中で始まった建築工事

アパートのポストには工事のお知らせのチラシも入っていません。
何が建つのか、いつまで建築工事が続くのかもわかりませんでした。

半月が過ぎた時に堪らなくなり、アパートの管理会社に電話しました。
「こちらにも何も連絡はありません。明日そちらの建築現場に行って聞いてみますので又ご連絡します」

翌日アパートの管理会社の事務員さんから電話がありました。
「工事主の立て看板もなく、工事の人もいなかったので、わかりませんでした」

建築工事が始まり1ヶ月が過ぎた6月です。
空は咳き込むようになりました。
マスクをして仕事をしました。
「だいじょうぶ?」
何人かの会社の人たちが聞いてくれました。
夜も咳が出て眠れない程に悪化していました。

会社を休めない7月の月初めの週
『慣れた仕事だから体調が悪くても大丈夫』
空は自分が任されている仕事を終えました。
会社に有給休暇の届けを出して病院に行きました。
診察中も点滴をしながらのレントゲン検査の間も咳が止まりません。
点滴をしている空に医師が言いました。
「入院だね、3日~4日間の入院になるよ」

な・な・なんですか~!
空の頭にはマナちゃんの事しかありません。
実は6月に1度診察した時に医師から入院を勧められていました。
「猫がいるので入院はできません、一人暮らしなんです」と空は即答で答えていたのです。
しかし今回は空の体は悲鳴をあげていました。
入院だよと医師に言われた時、素直に頷きました。

点滴を終えると「入院の準備のために1度帰宅させて下さい」と空が言いました。
「とりあえず病室に行って下さい。30分だけですよ」と言われました。

空は乗ってきた自転車に乗って必死にアパートに帰りました。
玄関を入るとマナを抱き締めました。
さささっと用意をするとマナを抱き締めて「行ってくるからね、ごめんねマナ」という空の心と手は震えていました。

マナと暮らしてから初めての外泊です。
入った病室からは隣のマンションが見えます。
空は『3日~4日の入院だし、近いから外出許可をもらってマナに会える』と思っていました。

入院した翌日から朝9時から午後5時まで点滴につながれました。
回診に来た医師に外出しても良いでしょうか?と聞きました。
「今はだめだよ、猫がいるんだろ? 家に帰らない方がいい」

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心を許すのは空だけのマナちゃん

『ビビりのマナは誰も受け入れない。玄関の戸を直ぐに閉めなければ外に逃げてしまう可能性もある』空の頭の中は真っ白になりました。

さて初めての試練の始まりです。
空はどうするのでしょうか?

続きは次のお話しで─